リーダーMANUAL(山行管理マニュアル)
2015/07/15 Rev.2
1.チーフリーダー(CL)、サブリーダー(SL)の定義
・CL−−その山行に参加するすべてのメンバーが安全に下山できることを最優先に判断、
行動する責任者である。この場合のCLとは先頭を歩くコースリーダーとは違う。
CLはメンバ−の体力、技術の把握を行うと共に、その行動を絶えず見守り
体調等の変化に配慮しなければならない。同時に山行中に起こる危険やアクシデ
ントを総合的に予測し、山行の中止や撤退を含めてこれに対処する。
・SL−−CL不在時または機能しなくなった場合の代行者である。またCLの役割を
サポートする協働者である。
2.計画段階における役割
(1)山行募集と参加メンバーの判断
山行募集の際にどのような知識・技術・経験が必要なのか、参加資格条件を明記して
募集する。(募集する担当者がCLと別のケースもあるが)そして、参加希望メンバー
の知識・技術・経験レベルがその山行に相応しいか否かの判断をする。不明な場合は、
山行管理局や同行経験者に聞くか、本人に山歴を申告させて判断する。
(2)山行計画書の作成
CLは山行計画書を漏れのないように作成する。作成する上での観点は「参加者は
もちろん、例えば捜索にあたる警察や救助隊などの第三者が見てわかる」ように。
(3)山行計画書の記載内容について
@その山行の最優先目的
A山域・コースおよび予定時刻
B加者氏名・住所・連絡先電話番号・緊急時における家族等の電話番号・生年月日
・血液型・山岳保険の有無と名称・担当連絡先
Cメンバーの役割(何をするのか事前に周知確認)
・記録−−時間、コース上ポイントとなる箇所などをメモし後日記録としてまと
める。携帯調査係がいない場合はそれも兼ねる。余裕があればカメラ
も担当。
・感想−−その時その場で感じた印象を後日まとめる。記録とクロスオーバー
しても構わない。
・携帯−−会員による山岳携帯電話通話調査は会のステータス。調査機種、
調査ポイント、天候、アンテナ数、通話状況(留守録や天気予報に
かけてみるなど)。後に行く人や遭難救助に役立つ。
・食料−−共同食事の係。軽量化するのか栄養重視か、その山行ごとに異なる。
・気象−−山行前・山行前1週間程度の天気、降水、雷情報などの情報収集
および山行日直前のチェックCL、SLとの判断打合せ
山行中・ラジオ(NHKや短波)による天気図取りと今後の予測を担当。
D装備計画(準備する人と山行中持つ人)
E食料計画
F非常食計画(不測のビバークを想定。1日の基礎代謝量は1500kcal)
G下山連絡先(携帯版下山連絡システムにて登録をする)
H最終下山連絡時刻(=救助始動時刻)
I山行計画書の公的機関(主に管轄警察署、登山ポスト)に対する提出方法
J中止、順延、エスケープルートの使用、引き返しは、どのようなタイミング(状況、
時刻など)で判断・行動するか(参加メンバーと事前に意識の統一を図ること)
(4)気象判断と現地情報判断
@気象判断
・気象担当者の収集した気象情報および出発前日の気象予測情報をもとにSLと
相談して、実施か否かの判断を行い、メンバー全員に確実に連絡する。
A現地情報による判断
・気象災害や工事等による入山まで、およびコース中、山行に支障の来す情報を
収集し、それをもとにした計画の変更、実施か否かの判断を行い、メンバー全員
に確実に連絡する。
(5)参加者全体のミーティング
その山行の目的や内容、危険時の対応方法など、メンバー全体が同じ意識を持つこと
は極めて重要である。CLがその責任を背負い込まないという意味でも実施することが
望ましい。ミーティングが最適だが、場合によってはメール等で上記の確認・了解を
取ることもある。
(6)山行管理局への提出
@所定提出期限までに参加メンバー間で練り込んだ山行計画書を山行管理局全員に
一括で送付する。計画書提出後、山行管理局はその山行に無理や危険因子が含まれて
いると判断したとき、計画書提出者に対して、アドバイスや変更要請、時には中止要請
をすることがある。
A山行管理局は山行計画書を検認するだけなので、CLはパ−ティ全体の力量を把握
し、メンバ−の事前訓練や練習等に問題が無いか、十分検討を行ってから無理の
無い山行計画書を提出する事。
(7)CLの選出とメンバ−の役割
@
山岳会での在籍が長かったり、年長者であったり、ル−トの経験があるからという事だけでリ−ダ−を決定させない。
A
メンバ−はリ−ダ−の判断について口を挟みづらくならないようにし、メンバ−自身も自分で判断する事を放棄せず、互いの意思疎通を十分に行う。リ−ダ−の判断は常に正しいとは限らず、おかしいと思ったときや疑問を感じた時に話し合い、提案できる関係が真のメンバ−シップと言える。
B
順調に行われた山行ではリ−ダ−の能力が問われる事は少ないが、登山が厳しい環境の中で行われる事態やアクシデントが発生した時にはよりその能力と役割が問われる事になる。何となくリ−ダ−を決定するのではなく、リ−ダ−を引き受ける者も仲間の生命と安全を守る覚悟と危機管理能力と対処能力を高めるための努力しなければならない。
C
メンバ−はパ−ティの決定事項を尊重し、個人的な感情を押し付けずCLの指示に従うこと。
D
メンバ−はCLにすべて任せるのではなく、自分ができることをしっかり行うこと。出来ないと判断した場合は、必ず申告すること。
E
CLは各メンバーに役割分担を行い、山行に主体的に参加できる環境を整えることが
望ましい。
3.山行中における役割
(1)公的機関に対する山行計画書の提出義務
公的機関(管轄警察署、入山口等にある計画書提出ポストなど)に対する計画書の
提出は義務である。ただし、アクシデントがあっても自力で即搬出等の対応が可能な
ゲレンデはこの限りではない。
(2)出発時に参加メンバーの体調チェック
睡眠不足、二日酔い、風邪、腹痛、疲労、生理など出発する事前に参加メンバーの
不調がないか必ずチェックする。また参加メンバーは体調不良の中で「行きたいから
黙っておこう」「言いにくい」ではなくて、「このまま行ったらパーティ全体が危険に
なる可能性がある」という意識を持ち、率直にCL(または話しにくいなら他の
メンバーからでも)に伝える。
(3)ストレッチ
歩き出す前にメンバー全員にストレッチを行い遭難防止する。
(4)オーダー
@オーダー(歩く順番)を決める。特に難しいコースでなければCLはラストを歩き、
参加メンバー全体を見渡せるようにする。難しいルートではCLがトップを登ること
もある。またセカンドには一番弱い人を置き、パーティペースを整える。経験者−
初心者−経験者−初心者・・・の順が、前後から初心者をフォローできて望ましい。
Aトップを歩く人はパーティ全員がオーバーペースにならないスピードをコントロール
する。主にセカンドに合わせるのがよい。
*一人先走る人にトップ、リーダーとしての資格はない!
Bお互い常に見える範囲内で歩く。
CCLはバーティのスピードに無理がないか(逆にスピードを上げることもある)、
メンバーの疲労はどうかを常に確認しながらトップやメンバーに指示を出す。
DCLがパーティ全体を見渡せない程度の大人数になる場合はパーティを分けて行動
すべきである。この時、通信手段を確保すべきである。(トランシーバー、省電力
トランシーバー、携帯電話)
E列を離れる時、具合が悪くなった時は必ず声をかけ伝える。
F道間違いの引き返しなどでオーダーが崩れた場合、直後に事故が起きやすいので、
先に行かせない。
(5)
危険箇所の確認と対処
@
危険箇所の事前周知を行い、通過する時は「何を注意すべきか」メンバー全体に声を出して注意喚起する。
A
危険箇所とは
・ガレ場、ザレ場−−−滑落、上部からの落石に対する注意
・浮き石のある岩稜帯、谷−−−上部を歩く登山者の起こす落石、自然落石、
下りでは転落・滑落
*上部にいる登山者の起こした落石による事故は下を歩いて落石に巻き込まれ
た方の過失もある!
・沢の徒渉−−−スリップ、流出(特に滝の上部)、増水
・河原(ゴーロ帯)−−−崩れる浮き石が多い
・登山道が沢を横切る地点−−−道迷い
・濡れた岩場−−−滑落(特に下りで注意)
・突起物(石や木の根)−−−転落(特に下りで注意)
・広い尾根−−−道迷い(特に濃霧、悪天時)
・痩せ尾根−−−転落、滑落、木や岩の剥がれ
・鎖場−−−鎖はあくまで片手で補助として使用
・ハシゴ−−−乗る時(特に下り)
・雷天時の稜線
・尾根から沢へ方向を変える道−−−道迷いなど
B自己本位な危険箇所の通過判断
・自分の通過した感じでは「みんな大丈夫だろう」と思いこみがちであるが、
それは何回も一緒に山行を共にした経験の中で生まれるパートナー同士が
感じ合うものであり、初めて同行するメンバーやそれほど同行経験のない
メンバーには適用しないと見た方がよい。少し過度に判断すべき。
(例えば、三点確保が必要な岩尾根で補助ロープを使うとか、沢登りにおける
ロープ出しの判断など)
(5)引き返すタイミング
@こういう状況になったら「引き返す」「エスケープルートを使う」
「ビバークする」「中止にする」を計画書段階でCLは記載し山行事前にメンバーに
同意を得る。
A引き返すタイミングとは
・当初計画段階で設定した「○○に13:00まで」に着かない場合
・天候の悪化−−−事前天気予報、現地での観天望気などの知識、技術が必要
・メンバーの体力消耗、体調不良
・今後出てくるであろう危険地帯通過のための装備不足、メンバーの持っている
知識、技術不足
・メンバー間の意見対立など信頼関係の崩壊
B悪状況下になった場合、CLはメンバーのモチベーション、疲労、時間、天候、
ルートなどを総合的に観察し、SLと相談しながら最終的行動判断をメンバー間に
伝え同意を得る。
(6)アクシデントを起こした場合の指揮
@」メンバーが事故を起こした場合、またはパーティ全体が窮地に立った場合、まずは
メンバーを安全圏に移動させ、落ち着かせる。
Aその後の対応の指揮をとる。
(CLが事故者の場合はSLまたは他の者が行う)
B道迷いの場合は、現在位置のわかるようなポイントまで引き返す。沢登り熟達者でも
ない限り谷には絶対下りない。夜間の行動はしない。体力温存を最優先にビバークし
救助を待つ。
C捜索救助の連絡は「緊急時対応マニュアル」を参照。救助が必要な場合は、警察、
そして会(留守録ではなく直に連絡)に連絡をする。
3.山行後の役割
(1)下山時のクーリングダウン
意外と忘れがちだが、使用後の筋肉マッサージなどのクーリングダウンは重要である。
CLは短時間でも必ずメンバーに促し実施。(入浴時の筋肉マッサージも有効)
(2)メンバーに対する役割分担の確認
山行は下りてきて終わりではない。ただの思い出にするだけなら山岳会はいらない。
必ず記録を書き出し、その時感じた印象を顧みて会に残す重要な役割がある。
それらの役割を下山後必ず再度メンバーに確認しておく。
(3)記録を会員に報告
ヤマレコやML、カモの会HPへ登録し、会員に周知する。この記録が今後行く人たちに
役立つし、自身振り返ることにより、その山行がより肥やしになる。記録係にやって
もらってもよい。
・2004/07/25適用
・2005/06/26一部変更 山行管理局長
・2015/07/15定期見直し副会長
以上